登山道具の中でも重量の大きいシュラフ(寝袋)の軽量化を考えている中で、最近ウルトラライト界隈で良く聞くキルトって本当に軽いの?便利なの?ということを自分なりに整理してみました。寝袋選びの参考にどうぞ。
キルト型とマミー型のシュラフの違い

キルト型シュラフとマミー型シュラフの主な違いは、背面の構造と形状です。キルト型は背中部分の生地を省くことで軽量化し、布団のように使用することを想定しています。一方、マミー型は全体が覆われており、保温性を最大限に高める設計になっています。
【メリット検証】キルト型は本当に軽いのか?
一般的に「キルト型は背中部分がない分軽い」と言われますが、実際のデータを見てみると、多くのキルト型シュラフはマミー型より重くなることがあります。
下のグラフは、横軸:重さ、縦軸:快適使用温度、円の大きさ:価格でUL系メーカーのシュラフをプロットしたもの。グラフの見方としてはグラフ左下であるほど軽いのに低い気温で使える温かいシュラフということになります。ここには、mont-bell、OMM、Enlightened Equipment、Cumulus、ISUKA、Western Mountaineering、Highland Desgin(ハイカーズデポ)、Sea To Summitなどのメーカーの主要製品を標準仕様(サイズはレギュラー、ダウン種類などオプション変更なし)で記載しています。

このグラフを、キルト型製品とマミー型製品で色分けしてみます。

左下にジッパーレス(展開できない)の軽量キルト、中央にマミー型、右上に一般的な(展開できる)キルトという並びで分布しています。ここでわかるのは、一般的にイメージされる展開できるジッパーありのキルトは、マミー型より重い傾向にあるということです。少しこの結果を考察してみます。
キルト型シュラフが重くなる理由(推測)

キルトというとみなさんがイメージするのは上の画像のようなフルに展開して、布団やブランケットのように使えるものだと思います。このタイプがマミー型よりも重くなりがちな理由としては、
- 背面がない分、他の部分の生地や部品が増える
- 固定用ストラップやスナップボタンなどの追加パーツが必要
が考えられます。
マミー型より軽いキルト型シュラフの特徴

一方でキルト型には分類されますが、足元を展開するジッパーを省略したタイプのキルトはシュラフ全体の中で最も軽量な部類でした。こう言った本当に軽いキルトというのは、
- ジッパーレスデザインによる軽量化(その代わり足元を展開できない)
- 900FP以上の高品質ダウンによる軽量化
- 薄い生地の使用による軽量化
をしたミニマルな製品になります。このような本当の意味での軽量キルトは、多くの人が期待するフルオープンで布団のように使える特徴を失っています。また、このタイプは価格も各メーカーの中でも最も高価格に設定されたハイスペック製品です(本国の価格で7〜8万円)。こうやって情報を見ていると、本当に7〜8万円払って軽量なキルトを買う必要ってあるのか?って思ってきます。
【メリット検証】キルト型の汎用性は本当に必要?
キルト型シュラフは「汎用性が高い」と言われますが、よく話題に上がるキルトの利点について、その必要性を考えてみます。
キルトは掛け布団のように使える?

足元まで開けるフルジップタイプのマミー型なら、ファスナーを開けることで同じような使い方が可能です。自分はダウンハガー800#3で掛け布団運用してます。
体に巻いてタウンジャケットやダウンパンツの代用になる?
ジッパー付きのマミー型シュラフなら、広げて体に巻くこともかぶることも可能です。また、mont-bellなどのシュラフなら中であぐらをかくこともできるので、ダウンパンツの省略ができます。
キルト型にしかない特徴
- フルオープンして1枚の布団のように使える
- ハンモックのアンダーキルトとして活用できる
- 他の寝袋に重ねてトップキルトとして保温性能を強化できる
キルト型の本当のメリットは、軽さよりも色々なアクティビティにつかえる汎用性なのかなと思います。
【デメリット検証】キルト型の「扱いにくさ」


ここまでキルト型のメリットについて確認してきましたが意外とキルト型にしかない特徴って少ないです。次にデメリットを確認しておきましょう。
- セットアップに手間がかかる
- 正しくセッティングしないと冷気が入りやすく、保温性が安定しない
- 必要なストラップやスナップなどのパーツが増え、シンプルさに欠ける
まとめると、構造も使い方も実は煩雑でシンプルではないということです。
テント場についてからのセッティングで時間を取られ、寝ている最中に冷気が入らないように微調整したり、撤収時にストラップを外したりと何かを時間を取られるわけです。
対してマミー型はただ寝袋に入るだけです。マミー型のほうが気軽に使えると思いませんか?道具は軽さよりも使いやすさや時間を奪われないことを重視している自分にとっては、このデメリットは大きいです。
軽さ、扱いやすさのバランスで軽量マミー型シュラフがオススメ
ここまで説明してきた内容から「軽さを重視したい人」はキルト型よりも軽量マミー型シュラフを選ぶ方が、より安価に荷物の軽量化を実現するとともに、設営撤収の手間を減らしてテント場で快適に過ごせるかもしれません。
軽量マミー型シュラフの選び方
軽量なマミー型シュラフを検討している人、今持っているシュラフよりも軽いシュラフがほしい人は以下の特徴を考慮して製品を選びましょう
- 使用温度域に合わせて最低限のダウン量の製品を選ぶ
シュラフの重量は半分以上がダウンの重さです。今3シーズン用(春夏秋用)シュラフを持っていてもっと軽くしたい人は、夏用であれば夏の温度域をカバーできる少ないダウン量のシュラフを選んで見ましょう。 - 軽量化を優先するなら、ジッパーやフードを省いたタイプを選ぶ
今持っているシュラフの温度域をそのままに更に軽いシュラフにしたい場合は、ジッパーやフードを廃した製品を選ぶことで軽量化できます。 - 素材を見直す
今持っているシュラフよりも軽い素材の製品にすれば、同じ性能でももっと軽いシュラフになります。ただし、価格は上がる傾向になります。- 7Dや10Dなどの超軽量生地を使用したモデルを選ぶ
- ダウンのフィルパワーが高いモデル(900FP以上)を選ぶ
おすすめの製品
ここまでの整理を踏まえて、おすすめ製品をいくつか紹介します。
3シーズンシュラフを持っている人が夏用の軽量シュラフを買う場合

- ISUKA / エアドライト140
フードとジッパーを領略した夏場を想定したシュラフ。重量300gと超軽量。価格は執筆時点で23100円と高コスパ!そして安心の日本製です。 - Cumulus / Magic 100
フード、ジッパーレスに加え、ポーランド産の900FPの高品質ダウンを使っています。生地も軽量にしているため、下限温度10℃に対して215gという驚きの軽さを実現しています。
3シーズンシュラフを更に軽量化したい場合

- Cumulus / X-Lite 300 , X-Lite200
上で紹介したMagic100と同じく、900FPダウンと超軽量の生地を使って暖かさと軽さを両立。Xlite200は下限温度0℃で350g、Xlite300は下限温度−4℃で465gという市場の全シュラフの中でも暖かさに対する軽さは最軽量クラスです。
まとめ
キルト型シュラフは一見軽量で汎用性が高いように思えますが、実際にはマミー型シュラフより重くなることもあり、セットアップの手間や冷気の侵入リスクなどのデメリットもあります。キルトの必要性を一度考えてみて、マミー型を使うことも検討してみるのもありですね。
コメント